「いのちの大きさに戻る」
子供じみたやり方を棄てる時が来ている。花子はそう感じた。
品行方正に人を見下す貴族階級を見ては唾を吐き、キレイに敷かれたテーブルクロスをめちゃめちゃに引き裂いて、自分の歩んできた泥道を象徴する靴裏で気の済むまで踏みつける。またあるときは、偽善めいた美しき言葉を吐くその偽善を素手でキャッチしてはその玉に、煙草の吸殻を押し付けた上に唾を吐きかけ、思いつく限りの罵詈雑言と、琴線に触れる奇抜さをともに投げ返す。
「お前らのようにはならない。」
もうそういうことをしている場合でないということが、早い秋の空気を通じて理解された。晴れた日の翌日の大雨と、さらにその翌日の晴れた日は、遠い時のやさしい記憶で彼女の内も外も包み込んだ。
ながお のぶこ